健康的に体重を絞るには?ジュニアアスリートの「正しい減量法」を検証
身体が資本ともいえる、ジュニアアスリート。適正体重を大幅にオーバーするとパフォーマンス低下につながるため、体重を絞る必要があります。とはいえ、成長期にあるジュニアアスリートにとって、「やせすぎ」や「間違ったダイエット方法による減量」はもってのほか。成長に悪影響を及ぼしてしまいます。
それでは、成長期のジュニアアスリートが健康的に体重を絞るには、どうすればいいのでしょうか?心がけたいポイントや、日常生活で実践できる工夫などについて、お伝えいたします。
食べすぎ?太りすぎ?お母さんがチェックしてあげましょう
競技にもよりますが、運動する上では“立派な身体”があったほうがベター。体格があればパワーもスタミナもつき、下半身も安定します。有利に働く要素が多いといえるでしょう。
とはいえ、食べすぎによって体脂肪がつきすぎるのはNG。筋肉を動かす際に体脂肪が“おもり”となり、スピードや機敏さを欠く原因になります。また、太りすぎていれば当然、身体にかかる重力も大きくなります。スタミナが落ち、疲れやすくなってしまいますよね。
大人になれば、「どれぐらいの体重だと動きやすいのか?」「体脂肪率が何パーセントを超えると、スピードが落ちるのか?」など、自分に適した体重や体脂肪率が分かるようになります。
でも、ジュニアアスリートはまだ、身体の仕組みや栄養・食事の知識に乏しく、自己管理能力もさほど高くありません。お母さんが普段から体重を確認すると共に、「スピードはどうか?」「疲れやすさはどうか?」などをチェックしてあげるといいですね。適正体重を一つの目安として、必要に応じて減量のサポートをしてあげたいものです。
「○○だけダイエット」や「糖質制限ダイエット」はOK?
では、減量が必要になったとき、どのような方法をとればいいのでしょうか?
テレビを見れば、タレントのダイエット企画をよく見かけますよね。子供たちはテレビ番組を通じ、多くのダイエット情報を見聞きしています。コーチや監督から「体重を減らしなさい!」と厳しい指導を受けたら、気が焦るもの。手っ取り早くやせられそうなダイエット方法に、飛びつきたくなるかもしれません。
ただし、「○○を食べるだけ!」といった、いわゆる“単品ダイエット”は、避けたい方法の一つです。
「コレだけ食べればやせられる!」という手軽さは、たしかに魅力かもしれません。でも、偏った食事を摂るのはキケン。「栄養失調に陥る恐れがある」「ストレスから過食につながるリスクもある」と、注意を促す専門家もいます。
ましてや、特にバランスの良い食生活が求められる、ジュニアアスリートたち。成長期に食べる物が偏っては、身体づくりに必要なたんぱく質や、身体の調子を整えるビタミン・ミネラルが不足して、成長に悪影響を及ぼしかねません。どんなに手軽そうに思えても、絶対に避けたいものですね。
また最近では、糖質の摂取を控える「糖質制限ダイエット」も流行。「たった1週間で2キロもやせた!」「1か月で5キロの減量に成功!」など、即効性があるとして人気を集めています。糖質制限食のレシピをまとめた本も見かけますね。
ただし、糖質制限の是非については、専門家の間でも意見が二分しており、その安全性に警鐘を鳴らす専門家もいます。
たとえば日本糖尿病学会は、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を発表。「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘しています。
また、糖尿病研究の世界的権威で、関西電力病院の院長でもある清野裕医師は、「糖質を制限すれば、筋肉量がどんどん減っていってしまう」と注意を喚起しています。
ジュニアアスリートが、いわゆる“マッチョ”のような筋肉をつける必要はありません。でも、十分な筋肉をつけることは欠かせません。糖質制限ダイエットの是非について意見が分かれるとはいえ、「筋肉分解が進む可能性がある」との指摘がある以上、できれば避けたほうがいいでしょう。
健康にやせるために、意識したい2つのポイントとは?
ここまでは、「ジュニアアスリートが避けたいNGダイエット方法」について見てきました。では、ジュニアアスリートが健康的にやせるには、どうすればいいのでしょうか?心がけたいポイントを、2つ紹介します。
>>ポイント1:まずは、嗜好品をやめさせよう!
成長や運動のために、多くの栄養が必要となるジュニアアスリート。やみくもに食べる量を制限するのではなく、「余計な摂取カロリーを抑える」ことを考えましょう。
まず出発点となるのは、「優先順位の低い食べ物」「成長や運動に必要ない食べ物」をやめること。まずは、お菓子やアイスなどの嗜好品を食べすぎていないか、普段の食生活を見直してみてください。
嗜好品は、「美味しいから食べる」という側面も当然ありますが、意外と「クセになっているだけ」「毎日の生活リズムに組み込まれてしまっているだけ」の場合も、多々あります。たとえば、学校から帰ったらすぐにお菓子を食べたり、お風呂上りにアイスを食べたり……。嗜好品を食べることが、日々の習慣になっていませんか?
お菓子やお菓子に含まれる脂質や糖質は、たしかにエネルギー源にもなります。ただし、身体の調整をするビタミンやミネラルなどの栄養素は、ほとんど含まれていません。何よりカロリー過多のものも多いため、真っ先にやめたい食品、やめるべき食品といえるでしょう。
染みついた習慣をやめるのは大変かもしれませんが、逆に一度やめれば、実践しやすくなります。まずは日々の生活習慣を見直してみましょう。
>>ポイント2:脂質の摂取量に気をつけよう!
ジュニアアスリートが健康的にやせるためには、「脂質の摂取量」も見直しましょう。
とはいえ、何かと敬遠されがちな脂質ですが、決して悪者というわけではありません。脂質は三大栄養素の一つ。生命維持や運動のためのエネルギー源となります。しかも、糖質やたんぱく質と比べて、効率よくエネルギーを生み出してくれる存在でもあります。
成長期にある小学生や中学生は、多くのエネルギーを必要とします。日常的に運動するジュニアアスリートなら、なおさら。良質な脂質をとることが、エネルギー源の供給にもつながりますね。
とはいえ脂質は、同じく三大栄養素である炭水化物やたんぱく質と比べると、カロリーが高め。1グラムあたりに換算すると、
・炭水化物・・・・・・・・・・・4キロカロリー
・たんぱく質・・・・・・・・・4キロカロリー
・脂質・・・・・・・・・・・・・・・9キロカロリー
と、2倍以上の開きがあります。摂りすぎると当然ながら、肥満を招きます。
「揚げ物を食べすぎている」「サラダにマヨネーズをかけすぎる」などのクセはありませんか?日常生活を見直して、「脂質を摂りすぎているかも?」という場合は、余分な摂取を控えることが大切です。
脂質の代謝を助ける「ビタミンB2」の力も借りよう!
ジュニアアスリートが健康的にやせるには、「嗜好品をやめる」「脂質の摂取量に気をつける」という2点が大切だとお伝えしました。
2つのうち、嗜好品をやめるのは比較的簡単ですね。一方の、脂質の摂取量を控えるというのは、少し難しいかもしれません。完全に抜くわけにはいきませんし、何より子供たちは脂っこいものが大好きです。
基本的に、脂質は摂らせてあげてもOK。ただし、「脂質が余らないよう注意する」必要があります。そのためにできる工夫を、2つお伝えしましょう。
>>工夫1:肉を食べるなら、モモやヒレなどの“低脂肪部位”を選ぶこと!
子供は肉が大好き。特に運動後はおなかがすくため、肉をおいしいと感じる子供も多いことでしょう。肉は、脂質が豊富な食材。成長期の子供が脂質を補給するには、適した食材といえます。
とはいえ、空腹に任せて食べすぎれば、脂質過多になります。なるべく脂質の少ない部位を選び、摂りすぎを防ぎましょう。
具体的には、牛肉や豚肉ならモモやヘレを選ぶのがベター。鶏肉はもともと低脂肪ですが、胸肉やササミを選ぶとなお、余分な脂質の摂取を抑えることができますね。
なお、焼くとパサつきが気になる鶏胸肉やササミですが、塩麹をもみこんでおくと、しっとりジューシーに焼き上がります。そのまま焼けば旨みもあるので、味付けは基本的に不要。ただし焦げやすいため、弱火で焼きましょう。
もしくは、野菜と一緒に蒸し焼きにすれば、焦げつきを防ぐことができます。野菜に含まれるビタミンやミネラルも一緒に摂れるので、一石二鳥ですね。
>>工夫2:脂質代謝を助ける“ビタミンB2”を一緒に摂る!
食べ物から摂取した脂質を余らなせないためには、「使い切る」ことも大切。体内に入った脂質を分解し、エネルギーにつくり変えて消費することが重要です。
そこで活用したいのが、ビタミンB2。実はビタミンB2は、脂質がエネルギーとして燃えるのを手伝う栄養素。摂取した脂質を、無駄なく使うのに役立つ存在なのです。
ビタミンB2を豊富に含むのは、うなぎやレバーなど。脂質の代謝促進のために、積極的に摂りましょう……と言いたいところですが、近年うなぎの価格が高騰。日常的に食べるのはやや困難ですね。レバーも、子供が苦手意識を持つことが多い食材。毎日食卓に……というのはむずかしそうです。
可能な限り、ビタミンB2を含む食品を食べさせてあげましょう。必要に応じて、ビタミンB2を含むサプリメントを活用すると良さそうですね。
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