子供にも多い“スポーツ性貧血”!知っておきたい基礎知識と予防策とは?
成長期は、多くの栄養を必要とする時期。鉄分の補給が追いつかず、貧血になる子供も少なくありません。運動量や発汗量の多いジュニアアスリートの場合は、“スポーツ性貧血”のリスクとも隣り合わせ。特に、小学校の中・高学年や中学校の女子アスリートたちは、月経が始まる時期。鉄分が多く失われるため、貧血を引き起こす可能性が高くなります。
今回は、こどものスポーツとは切って離せない“スポーツ性貧血”に注目。「スポーツ性貧血って何?」という基礎知識から、予防対策のために摂りたい栄養素やポイントまで、スポーツ性貧血について解説します。
朝礼で倒れるのは、いわゆる「貧血」とは違う!?
子供の頃、朝礼や運動会などで校長先生の挨拶が長引くと、倒れる子がたまにいましたよね。「クラクラと立ちくらみがした」「だんだん気分が悪くなった」と、ご自身の記憶として覚えておられる方もいるかもしれません。こういったとき、「貧血で倒れた」という表現をしたのでは?
実はこれは、「脳貧血」と呼ばれるもの。脳への血液供給が一時的に不足して、めまいや立ちくらみなどの症状を起こす、一過性の症状です。いわゆる「貧血」と名前は似ていますが、別物なんですね。
では、「貧血」とは何を指すのでしょうか?
貧血は「血が貧しくなる」と書きますが、読んで字のごとく「血の栄養成分が乏しくなる」こと。医学的には、「赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態」のことを指します。
ヘモグロビンというのは、赤血球のうち大部分を占めている、赤色の色素成分。血液が赤いのは、このヘモグロビンが影響しているため。鉄分とたんぱく質が結合してできており、身体中に酸素を届ける役目を果たしています。
ヘモグロビンが豊富に保たれていれば、身体のすみずみまでスムーズに酸素が運ばれます。逆に不足した状態が続いていると、酸素が行き届かないように。慢性化すると、息切れやめまいなどの貧血症状が現れるのです。
ジュニアアスリートに多い“スポーツ性貧血”とは?
人生の中でもっとも栄養を必要とするのは、小学生から高校生にかけての成長期。この時期は、多くの栄養素を成人並み、もしくは成人以上に摂取する必要があります。思わぬ栄養不足から、貧血になるリスクを抱えている時期なのです。
ジュニアアスリートの場合、「運動量の多さ」「発汗量の多さ」などの原因から、「スポーツ性貧血」に陥ることも。スポーツ性貧血とは、運動によって血液中の赤血球の数またはヘモグロビン濃度が低下した状態のこと。貧血を引き起こす原因によって、次の3つに分類されます。
>>1:鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは、鉄分を中心とした「赤血球を合成する材料」が不足している場合に起こる貧血。もっとも多いのが、このタイプです。
練習中、ジュニアアスリートは大量に発汗し、同時にミネラルを失っています。その中には、貧血に関わりの深い鉄分も。一度の発汗で失われる量は、わずかと言われています。でも、それに見合った鉄分補給をしなければ、長期的にはいずれ鉄分不足になってしまうのです。
鉄分は、ヘモグロビンの材料。鉄分が不足すればヘモグロビンの生成能力が低下し、貧血になってしまいます。女の子の場合は、生理によっても鉄分が失われるため、特に注意が必要です。
>>2:溶血性貧血
次に、溶血性貧血について。これは、足裏への度重なる衝撃によって赤血球が変化し、壊れやすくなって起こる貧血です。
赤血球の寿命は、通常120日ほど。脊髄で新しくつくられることにより、常にほぼ一定数に保たれています。とはいえ、「壊れてしまう赤血球の数」が「新しくつくられる赤血球の数」を上回ると、血液中の赤血球の数が減ることに。その結果、貧血になってしまうのです。
特に、運動中に足底部を繰り返し打ちつけることの多い、長距離走やサッカー、バレーボール、バスケットボール、剣道の選手に多く見られるのが、溶血性貧血の特徴。子供がこれらのスポーツに励んでいるなら、頭に入れておきたいものですね。
>>3:希釈性貧血
希釈性貧血とは、循環血漿(けっしょう)量の増加により発生する「見かけの貧血」のことです。
血漿とは、血液に含まれる液体成分の一つ。血液のうち、赤血球や白血球、血小板などの、血球成分をのぞいたものを指します。
透明で淡黄色の液体で、成分の約9割が水分。それ以外には、ナトリウムイオンやたんぱく質が溶け込んでおり、全身をめぐりながら栄養素やイオン、水などを運び、不要物や余分な水を持ち帰る役割を果たしています。
運動すると、血管内では血漿が増加します。末端までの血液の循環を良くするために、「血液量を増やそう!」とし、血漿を増やすのです。ただし、ヘモグロビンの量はすぐには増えません。そのため、相対的にヘモグロビン濃度が下がってしまうのです。
起こる仕組みから分かるように、希釈性貧血はあくまで一時的なもの。特に予防対策をする必要はないと言われています。
予防には、鉄分補給だけでなく「ビタミンB群」なども必要!
ここまで、3つのスポーツ性貧血について説明してきました。希釈性貧血については、特に予防策をとる必要がありませんが、残りの「鉄欠乏性貧血」「溶血性貧血」の2つは予防が必要です。一体どうすればいいのでしょうか?
予防策を考える前に、それぞれが引き起こされる理由を、おさらいしましょう。
・鉄欠乏性貧血・・・・・・・鉄分不足を主な原因とする、ヘモグロビンの減少
・溶血性貧血・・・・・・・・・足裏への度重なる衝撃による、赤血球の破壊
溶血性貧血に関していえば、直接の原因は、足裏の毛細血管に強い反復衝撃が加わること。まずは物理的な刺激を減らすことが大切ですね。エアクッションの入った靴を履くのも、予防策の一つ。足裏への刺激をやわらげることにつながります。
その上で、どちらのタイプの貧血においても、ヘモグロビンの合成を促しつつ、いわば“ヘモグロビンの入れ物”である赤血球の合成も、手助けしてあげることが必要ですね。
では、どのような栄養素が必要か、具体的に見てみましょう。
>>1:ヘモグロビンの材料となる「鉄分」「たんぱく質」!
ヘモグロビンというと鉄分のイメージが強いですが、実は鉄分とたんぱく質が結合してできたもの。鉄分はもちろんのこと、たんぱく質もしっかり摂りましょう。
なお鉄分は、赤身の肉や魚、レバー、貝類などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、ひじきや小松菜、ほうれん草などの植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄のほうが吸収率は高いものの、カロリーも高め。非ヘム鉄もバランス良く取り入れたほうがいいでしょう。
>>2:鉄分の吸収率をアップさせる「ビタミンC」!
鉄分は、吸収率が低い栄養素。ただし、ビタミンCと一緒に摂ることで、吸収率を上げることができます。食事の際には、ビタミンCたっぷりのサラダを添えるなどして、吸収率を上げる工夫をしてあげましょう。
逆に、緑茶や紅茶と一緒に摂ると、鉄分の吸収率を下げることになります。くれぐれも気をつけてくださいね。
>>3:たんぱく質の分解・合成などに活躍する「ビタミンB群」!
貧血対策には、ビタミンB6やビタミンB12、葉酸などのビタミンB群を摂ることも必要です。
たんぱく質は一度体内に入ると、細かく分解されてアミノ酸に。その後、たんぱく質に再合成されることで、それぞれの役割を果たします。たんぱく質の再合成の際に、補酵素として働くのがビタミンB6。食事によって取り入れたたんぱく質を活用するには、ビタミンB6も必要だということですね。
また、赤血球の形成を助けるのが、ビタミンB12と、ビタミンB群の一種である葉酸です。これらのビタミンB群も、積極的に摂りたいものです。
ビタミンB群は、水に溶ける性質を持つ水溶性ビタミン。使われなかった分は、汗や尿となって排出されるので、こまめに摂ることが大切です。貧血が気になる場合は、サプリメントを利用するのもいいですね。
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